榛名山二ツ岳の噴火

二ツ岳の噴火の様子
群馬大学教育学部教授 早川由紀夫氏のサイトより

古墳時代の6世紀前半に,約30年を隔てて二回の爆発的噴火が伊香保温泉の南から起こった.渋川噴火(M4.8)伊香保噴火(M4.9)である.第一回目の渋川噴火は水底から始まったらしい.激しい水蒸気マグマ爆発によって赤紫色の降下火山灰を大量に降らせたあとに火道を溶岩ドームが上昇してきた.しかし,これは時を置かずに崩れ,沼尾川や平沢川を岩塊まじりの火山灰流として下った.崩壊によって荷重負荷を瞬時に喪失した火道は減圧によって大爆発し,強いプレー式熱雲を発生させた.これによって350km2の範囲が焦土と化した.デイサイト岩塊で埋積されたこの火道の断面を伊香保町湯元で観察することができる.中筋遺跡はこの噴火で埋没した.

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   群馬県火山の噴火シナリオとハザードマップ    榛名山(前橋市街より)

次の伊香保噴火は,まずプリニー式噴火で始まった.成層圏に達した高い噴煙柱から降下する軽石はつよい南西風に吹かれて,まず子持村で黒井峰遺跡を埋没させたあと,赤城・日光・高原・那須・安達太良の各火山の上に順次降り注いだ.噴煙柱の一部崩壊によって発生した火砕流は主に南へ相馬ヶ原方向へ流下した.最後に,火道を二ツ岳溶岩ドームがゆっくりと上昇して来てこの噴火は終わった.二回の噴火事件とも,噴火中とそのあとしばらくラハールが頻発しておもに高崎方向へ下った.軽石表面が黄褐色に染色されてマトリクスに気泡が認められる高温ラハールとそうでない低温ラハールの区別がつく.北へ下ったラハールのほとんどは広瀬川低地帯を流れ下った.前橋台地を切り込んで流れている現在の利根川はこの噴火のあとに選択された流路である.

噴火の形態
気象庁のページ:榛名山の噴火より
 ▲400←→500年 マグマ水蒸気噴火
   二ッ岳有馬火山灰噴火:火砕物降下。

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   画像はWikiより

 ▲489←→498年の初夏 大規模(渋川噴火(M4.8)):マグマ水蒸気噴火→(泥流)
   二ッ岳渋川噴火:火砕物降下・火砕流→泥流。噴火場所は二ツ岳火口。
   現在の二ツ岳付近からマグマ水蒸気爆発、水蒸気爆発、火砕流など。
   マグマ噴出量は0.32 DREkm3。(VEI4)

 ▲525←→550年の初夏 大規模(伊香保噴火(M4.9)):マグマ噴火
                       →マグマ水蒸気噴火→マグマ噴火→(泥流)
   二ッ岳伊香保噴火:火砕物降下・火砕流→溶岩ドーム、泥流。噴火場所は二ツ岳火口。
   プリニー型噴火による降下軽石・火砕流と二ツ岳溶岩ドームの生成。
   マグマ噴出量は0.74 DREkm3。(VEI5)


  • 最終更新:2016-09-15 23:37:44

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